SUNSWELL RECORDING「カスタマーハラスメントに対する基本方針」

1 はじめに
(1)カスタマーハラスメント対策の背景
近年、カスタマーハラスメントが深刻な課題となっています。厚生労働省「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に「カスタマーハラスメントを受けた」と回答した労働者は全労働者のうち10.8%と、パワーハラスメントに次いで多い状況です。
東京都では、令和6年10月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が成立し、都内で事業を行う事業者に対して、カスタマーハラスメントの防止に向けた措置が求められています。
令和7年4月に実施した社内アンケート調査においても、迷惑行為に該当する事態に遭遇したと報告が従業員からあがっており、当該従業員は精神的な被害によりしばらく直接の顧客対応が不可能なほどの衰弱を強いられたため、カスタマーハラスメント対策を強化することとしました。
(2)組織的な対応の必要性
カスタマーハラスメントは、従業員に精神的・身体的苦痛を与え、その尊厳や人格を傷つける行為です。従業員一人ひとりをカスタマーハラスメントから守り、その能力を十分に発揮できるよう、良好な就業環境をつくることが重要です。
当社においては、現場の従業員任せにすることなく、あらかじめ統一的な対応方法を定めるなど、組織的なカスタマーハラスメント対策に取り組みます。 
(3)マニュアルの位置づけ
   本マニュアルでは、カスタマーハラスメントの定義、カスタマーハラスメントに対する基本方針、当社における判断基準や対応例、社内体制などを示します。


2 カスタマーハラスメントの定義
当社においては、カスタマーハラスメントを「顧客等から従業員に対して行われる著しい迷惑行為であって、従業員の就業環境を害するもの」と定義します。
【カスタマーハラスメントの定義イメージ】

(資料)東京都「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル」より
「顧客等」とは、当社の商品やサービスを提供する顧客のほか、当社の事業に相当な関係を有する人、円滑な業務の遂行に当たって対応が必要な人を指します。
「従業員」とは、当社で働く人全てを指します。役員、正社員のほか、嘱託社員や派遣社員やアルバイトなども含まれ、当社の事業活動に密接に関わる業務委託先のスタッフなども該当します。
「著しい迷惑行為」とは、以下のような行為を指します。ただし、あくまで例示であり、これらに限られるものではありません。(実例は社内アンケート調査に基づくもの)
【著しい迷惑行為の例】
・暴力行為
 (実例)提供した飲食物が注文内容と異なるとして激高して胸ぐらをつかまれた。
・暴言・侮辱・誹謗中傷
・威嚇・脅迫
・従業員の人格の否定・差別的な発言
・土下座の要求
(実例)当社スタッフが顧客が指示した通りのオペレーション作業を行わなかったとして、土下座して謝るよう強要された。
・長時間の拘束
・社会通念上相当な範囲を超える対応の強要
・合理性を欠く不当・過剰な要求
(実例)レコーディングされたOKテイクを当社スタッフが誤って消去してしまい、同一テイクは2度と録れないという理由で顧客が激高の後、不当に高額な賠償金を請求された。
・会社や従業員の信用を棄損させる内容や個人情報等をSNS等へ投稿する行為
• 従業員へのセクシャルハラスメント、SOGI※ハラスメント、その他ハラスメント、つきまとい行為 など 
※「SOGI」(ソジ)は、性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)の頭文字をとった略称
「就業環境を害する」とは、従業員が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったため、従業員が業務を遂行する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
判断に当たっては、平均的な就業者が同様の状況で当該行為を受けた場合、社会一般の就業者が業務を遂行する上で看過できない程度の支障が生じたと感じる行為であるかどうかを基準とします。


3 カスタマーハラスメントに対する基本方針
  当社においては、以下の「カスタマーハラスメントに対する基本方針」に基づき、カスタマーハラスメントに対して、組織として適切に対応します。また、この基本方針を文書にて社内に、Webサイトを通じて社外に広く周知します。
SUNSWELL RECORDING「カスタマーハラスメントに対する基本方針」
1. はじめに
当社は、「NOカスハラの実現」という基本理念の下、安全・安心なレコーディング環境・音楽制作体験を提供するため、お客様の要望に真摯に対応し、より満足度の高いサービスの提供に向けて取り組んでいます。また、お客様からお寄せいただくご意見・ご要望は、当社のサービスの改善・品質向上において、大変貴重な機会と考えております。
一方、一部のお客様の要求や言動の中には、従業員の人格を否定する暴言、脅迫、暴力など、従業員の尊厳を傷つけるものもございます。こうした社会通念に照らして著しく不当である行為は、従業員の就業環境を悪化させるだけでなく、安全・安心なサービスの提供にも悪影響を及ぼしかねない重大な問題であります。
従業員の安全な就業環境を確保することで、従業員が安心して業務に取り組むことが可能となり、ひいては、お客様との関係をより良いものとすることにつながると考え、SUNSWELL RECORDINGにおける「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を定めました。
2. 当社におけるカスタマーハラスメントの定義
当社では、カスタマーハラスメントを「お客様から従業員に対して行われる著しい迷惑行為であって、従業員の就業環境を害するもの」と定義します。
具体的には、以下のような行為を指します。あくまで例示であり、これらに限られるものではありません。
• 暴力行為
• 暴言・侮辱・誹謗中傷
• 威嚇・脅迫
• 従業員の人格の否定・差別的な発言
• 土下座の要求
• 長時間の拘束
• 社会通念上相当な範囲を超える対応の強要
• 合理性を欠く不当・過剰な要求
• 会社や従業員の信用を棄損させる内容や個人情報等をSNS等へ投稿する行為
• 従業員へのセクシャルハラスメント、SOGI※ハラスメント、その他ハラスメント、つきまとい行為 など
※「SOGI」(ソジ)は、性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)の頭文字をとった略称
3.カスタマーハラスメントへの対応(社内)
• カスタマーハラスメントを受けた場合、従業員のケアを最優先します。
• 従業員に対して、カスタマーハラスメントに関する知識・対処方法の研修を行います。
• カスタマーハラスメントに関する相談窓口の設置や警察・弁護士等の連携など体制を整備します。
4.カスタマーハラスメントへの対応(社外)
• 問題解決に当たっては、合理的かつ理性的な話し合いを行いますが、当社でカスタマーハラスメントに該当すると判断した場合、対応を打ち切り、以降のサービスの提供をお断りする場合があります。
• さらに、悪質と判断した場合、警察や外部の専門家(弁護士等)と連携の上、毅然と対応します。


4 顧客対応の考え方
(1)基本的な心構え
顧客等から寄せられるクレームの全てがカスタマーハラスメントではありません。商品やサービスの品質に関する指摘、接客態度の不満など、正当なクレームは、業務の改善、新たな商品やサービスの開発につながる貴重な機会でもあります。
クレームに対する従業員の適切でない言動が端緒となって、カスタマーハラスメントを発生させている可能性もあります。
当社においては、以下の基本的な心構えに基づき、適切な顧客対応を実現します。
①  気持ちを理解して傾聴する
・顧客等と良好な関係を築くため、相手がどういう意図のオペレーション指示をしているのかを理解する。
・どういった作品にしていきたいのか、顧客やアーティストや作品等の背景を推し測って全体概要の把握に努める。
② 誠実に対応する
・オペレーション指示への理解が重要であり、完全に理解できなかった指示については言葉遣いなどに注意した上で、指示の詳細を再度伺う。
・不誠実な言動をしたり顧客等をクレーマー扱いしたりしない。
   ③ 共感を伝える
・相手との共感を深める上で効果的な「あいづち」を活用する。
・具体的には、「なるほど」「よくわかります」「そうなのですね」など、声に出して傾聴する姿勢を見せる。
   ④ 限定的な謝罪を行う
・責任が不明確な初期段階では対象を限定した謝罪を有効に活用する。
・具体的には、「ご心配をおかけし(ご不快な思いをおかけし)申し訳ありません」と謝罪する。
   ⑤ 対応者を代わる
・相手の怒りが収まらない場合、躊躇せず別の担当者や上位者に代わる。
・対応する従業員が感情的になって対応を代わらないことは避ける。
・自分が全て悪いと思わない、執拗に人格を責める言葉を真正面から受け止めない。


(2)クレームの初期対応
当社においては、カスタマーハラスメントを未然に防止するため、顧客等のクレームの初期段階で、以下のとおり対応します。
   ① 顧客等に寄り添う
・商品・サービスの不具合等を起因とした顧客等からの商品交換や代替サービスの提供等の要求自体は、社会通念上妥当であり、真摯に受け止める。
・傾聴し、時には寄り添いながら顧客等の主張を正確に聞き取る。
② 要求内容を特定する
・要求内容を明確に特定した上で、議論を限定する。
・特定した要求内容を踏まえ、対応の可否を検討する。
・電話、メッセージングアプリ、メール等でのクレーム対応の場合、顧客等の氏名や連絡先等を確認し、可能な範囲で特定する。要求内容を聞いた上で、同じ内容を復唱し、要求内容を特定する。
③ 事実関係を確認する
・5W1H(※)により正確な事実関係を確認する。
※When(いつ)/Where(どこで)/Who(誰が)/What(何を)/Why(なぜ)/How(どのように)
・事実を確認しないまま、顧客等の要求内容を認める発言はしない。
・事実関係の確認前の段階では限定的な謝罪(例:お客様に嫌なお気持ちを与えてしまい誠に申し訳ございません。)にとどめる。
・組織的な調査・確認が必要である場合は、必要な調査等を行った上で回答する旨を顧客等に伝える。
・調査・確認に時間を要する場合、具体的な日数(例:〇日間、〇週間程度)を伝える。
④ 複数人で対応する
・組織で対応することを明確にするため、原則、複数人(※)で対応する。
※顧客等が複数の場合、できる限り同数以上の複数人
※顧客等が多数の場合、必要最小限の人数(対応する従業員数以下)に制限して対応
・役割分担(応対、記録等)を定め、各自が役割を遂行する。
・訪問でのクレーム対応の場合、カスタマーハラスメントの発生を未然に防止するため、複数人で訪問する。不測の事態が発生した場合に早急な援助を期待できないことから、単独行動を取らない。
・電話でのクレーム対応の場合、初期対応した従業員による対応を原則としつつ、顧客等の要求が著しく相当性を欠く内容であれば、1人で抱え込まず対応者を上司に代わる。
   ⑤ 対応場所を選定する
・原則、ZOOM等のオンライン上で対応し相手方に許諾を取った上で録音、録画をし正確な記録を心掛ける。
・やむを得ない場合、次の措置を講じた上で、会議室等で対応する。
✓密室状態にしない。ドアを開けて室内の状況を周囲が確認できるようにする。
✓すぐに退室できるように、従業員は出入口側に着席する。
✓退去しない場合に不退去とみなすため、管理権の範囲内の場所(例:執務室内の会議室)を選定する。
✓相手方の許諾を取った上で録音、録画をし正確な記録を心掛ける。
・顧客等を訪問してクレーム対応する場合、可能な限り、顧客等の自宅やオフィスでの対応は避ける。難しい場合、第三者がいる場所で対応する。
   ⑥ 対応内容を記録・情報共有する
・顧客等への対応内容を可能な限り詳細に記録する。
・対応内容は速やかに社内で情報共有する。
・顧客等との会話を録音(※)する。
※トラブルを避けるため、事前承諾を得ることが望ましいが、同意を得ない録音でも直ちに違法ではないとされる。
・顧客等が同じ話を何度も繰り返す場合、記録を基にいつ、何回、何を回答(説明)しているかを具体的に伝え、経過を把握して対応していることを示す。
・インターネット上でのクレーム対応の場合、書き込まれた内容を正確に記録し証拠として残す。記録内容は、投稿者の属性、対応年月日・時間、要求内容、対応状況などで、投稿者のプロフィールやリンク、関連するやり取りも保存する。
・SNSの投稿やメッセージはすぐに削除される可能性があるため、スクリーンショット等を活用し保存する。


(3)顧客等の権利の尊重
   顧客対応に当たっては、消費者基本法で規定される消費者の権利など、顧客等の権利を十分尊重した対応が求められます。ただし、顧客等にどのような背景や事情があっても、「暴力や暴言などの行為に耐える必要はない」ことは当然です。
また、令和6年4月1日から、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されており、基本的な考え方を理解しておく必要があります。
(参考)政府広報オンラインHPより抜粋
○不当な差別的取扱いとは?
 障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否したり、サービスなどの提供に当たって場所や時間帯を制限したりするなど、障害のない人と異なる取扱いをして障害のある人を不利に扱うことをいいます。障害者差別解消法では「不当な差別的取扱い」を禁止しています。
○「合理的配慮の提供」とは?
 社会生活において提供されている設備やサービスなどは障害のない人には簡単に利用できる一方で、障害のある人にとっては利用が難しく、結果として障害のある人の活動を制限してしまっている場合があります。このような、障害のある人にとっての社会的なバリアについて、個々の場面で障害のある人から「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意思が示された場合には、その実施に伴う負担が過重でない範囲で、バリアを取り除くために必要かつ合理的な対応をすることとされています。これを「合理的配慮の提供」といいます。
○合理的配慮の範囲
 合理的配慮は事業者等の事務や事業の目的・内容・機能に照らし、次の三つを満たすものでなくてはなりません。

事務・事業規模財政・財務状況

必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること。

障害のない人との比較において、同等の機会の提供を受けるためのものであること。

事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと。
 また、先述のとおり合理的配慮の提供については、その提供に伴う負担が過重でないことも要件となります。
○「過重な負担」かどうかの判断は?
 合理的配慮の提供が、各事業者にとって「過重な負担」かどうかの判断は、以下の要素などを考慮して、個別の事案ごとに具体的な場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。

事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)

実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)

費用・負担の程度

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